非固形食を摂ることによる自律神経系への影響 & Come Come Happiness

 現在の日本では高齢化に伴う介護食市場が成長しており、2030年にはその規模は1,405億円に到達すると予測されている。介護食は高齢者や病気・障害などにより、通常の食事が困難になった人が対象となる。介護食の一つにミキサー食と呼ばれるものがあり、普段の食事である通常食をミキサーにかけ、舌ですりつぶせる程度までペースト状にした食事を指す。噛まずに飲み込むことのできるミキサー食を取った場合、通常食と比較して脳機能への刺激不足や、食の楽しみの喪失を通じて、認知機能の低下や精神衛生上の悪影響をもたらすと言われている。そこで本研究では、心拍計と脳波計を用いて、“噛むこと”と“噛まないこと”が日常生活において自律神経活動に与える影響について評価した。
 通常食のように“噛む”ことを目的とした食事の場合、“噛む”ことは神経系への刺激をもたらす効果があり、交感神経を優位にし、心身を活動的な状態にすることが示唆された。一方、“噛む”ことがほとんどないミキサー食は神経系への刺激が無く副交感神経が優位になり、心身がリラックスした状態になることが示唆された
 さらに、“噛むこと”のメリットについて啓発する運動である“Come Come Happiness”についても紹介する。

野内 陽向、山口 悟†*
†茨城県立日立第一高等学校 化学部 〒317-0063 茨城県日立市若葉町3丁目15番1号
(2025年10月10日 受付;2025年10月27日 受理)