宇宙生活における生物餌料タマミジンコの青波長依存的な高効率増殖と季節性の解析

 現在,人間が月や火星などの衛生・惑星で生活するための有人活動基地の研究開発が進められている。近年,動物性タンパク質の必要性や食の多様性等の点で,宇宙生活においても動物性食糧の摂取が求められている。ティラピアや食用コイなどの魚類は,動物性食糧として利用可能である。これらの生物餌料として,タマミジンコMoina macrocopaが注目されており,宇宙の養殖システムにおいてタマミジンコの高効率・高濃度培養技術の開発が進められている。タマミジンコは,生活環境が良いときは雌の単為生殖によって育房中の未受精卵が発達・発育して子となり体外へ放出される。一方,生活環境が悪くなると雄が出現し,雌と交尾して受精卵を形成する。受精卵は耐久卵と呼ばれ,耐久性が強く水不足や水の枯渇など,生活環境の変化による状況の悪化に耐えられる構造になっている。
 タマミジンコやその他のミジンコに関する培養条件の知見はすでにいくつか報告されている。しかし,光環境がタマミジンコの増殖に与える影響は報告されていない。そこで,効率的培養に重要な光環境を明らかにした。その結果,白色LEDを光源とした培養環境に対して,450 nmをピークに持つ青色LEDの照射下における培養では,7日間の期間で2.5倍の効率で増殖することを明らかにした。一方で,明暗周期と放射照度と,増殖の効率に関連性は見られなかった。また,時期により産仔効率に大きな違いが生じ,季節性があることが明らかとなった。興味深いことに,特に5月から7月にかけて,青色光照射下では,雄の産仔が抑制されていることがわかった。このことから,青色光照射下での効率的なタマミジンコの増殖の要因は,耐久卵が抑制され単為生殖によるものであることが示唆された。

佐藤 直稀,菊池 彩香,飯島 美月,金田 智美,茅根 幹泰,國府田 宏輔†*
茨城県立太田西山高等学校 自然科学部 〒313-0007 茨城県常陸太田市新宿町210
(2023年12月25日 受付;2024年3月22日 受理)