メチルセルロースを用いた運動抑制によるパラミロン高含有ユーグレナの培養条件確立

 ユーグレナが生成する多糖類のパラミロンは,数百から数千分子のグルコースがβ‐1,3結合でつながっている。これが三重らせん構造を形成してさらに複雑に絡み合い,円盤型の構造体として細胞内に存在する。ユーグレナは,グルコースからパラミロンをエネルギー貯蔵物質として産生する。最近,パラミロンは有用性のある物質として非常に注目されている。例えば,生分解性プラスチックの原料として用いられるだけでなく,ジェット燃料の原料であるワックスエステルの前駆体でもある。ユーグレナのパラミロン含有量は,培養条件に大きく影響を受ける。本研究では,パラミロン抽出法を確立した後に,ユーグレナにパラミロンを効率よく産生させる培養環境を比較検討した。世代時間を比較検討したところ,独立栄養培養では従属栄養培養の0.86倍の世代時間で培養できた。一方,細胞1個あたりのパラミロン量は,グルコースやスクロースなどの糖類を用いた従属栄養培養で,独立栄養培養の場合に比べて1.8〜3.2倍まで増加した。さらに,ユーグレナの鞭毛運動を抑制すればエネルギーを貯蔵するのではないかと考え,2.5%メチルセルロースを含んだ高粘度の培地で培養したところ,細胞1個あたりのパラミロン量が独立栄養培養の場合に比べて4.7倍増加したことが明らかとなった。これらのことから,ユーグレナを静止期直前まで独立栄養培養した後,高粘度培地とスクロースを含む従属栄養培養を行うことで,パラミロン高含有ユーグレナを効率よく培養できると考えられる。

美留町竜輝,國府田宏輔†*
茨城県立水戸第一高等学校生物同好会部〒310-0011 茨城県水戸市三の丸3−10−1
 (2019年3月1日受付;2019年3月28日受理)