茨城県立水戸第一高等学校の土壌からの抗生物質産生放線菌の単離

 放線菌は土壌中に生育する微生物である。放線菌の産生する抗生物質は,アンピシリンやカナマイシンなど,生命科学の研究に欠かせない。また,ヒトに対する薬剤としても利用されている。しかも,放線菌は現在も年間約150種類の新種が発見されている。このような放線菌は非常に興味深い生物であり,放線菌が産生する抗生物質も有用な物質として非常に興味深い。そこで私は,放線菌の産生する抗生物質を利用した手法の開発を検討した。まず,茨城県立水戸第一高等学校の土壌から,HV agar分離培地を用い,SDS-Yeast extract法または乾熱処理法により土壌から放線菌を単離し,コロニーを採取した。放線菌が分泌する抗生物質の存在を調べるために,放線菌がLB培地中で大腸菌の生育を阻害できるかを調べた。単離した放線菌を,LB培地で大腸菌と共に培養し,大腸菌の生育を阻害する抗生物質を産生する放線菌を35クローン中,4クローン単離した。この単離した放線菌の菌体を,大腸菌とユーグレナ(ミドリムシ,Euglena gracilis)とともに共培養したところ,大腸菌の生育を抑制しユーグレナの培養を行うことができた。この結果は,この放線菌を用いるだけで,ユーグレナなどの真核性の微生物を,抗生物質などを用いずに開放系で培養できる可能性があることを示唆している。

楠原若菜,國府田宏輔‡*
茨城県立水戸第一高等学校生物同好会部〒310-0011 茨城県水戸市3-10-1
(2019年7月22日受付;2019年7月31日受理)