食用油の加熱劣化に対する新しい評価方法の開発

 “とんかつ”などの揚げ物を作る際に大量の食用油が必要となる。食用油を定期的に交換しないと,その油の品質が低下し風味や触感が悪くなり美味しいとんかつではなくなってしまう。さらに,この様な状況が進行した食品を摂取した場合,健康に悪影響を及ぼすようになる。したがって,美味しくて安全なとんかつを食べるためにも,油の的確な交換のタイミングを知るための,簡単にできる油の劣化程度(劣化度)の評価方法が必要である。そこで本研究では,油の劣化を調査し,油の劣化度を簡単に知ることができる新たな評価法の確立を目的とした。
 文献調査から,油の加熱劣化により過酸化物,その分解物,重合物,および遊離脂肪酸からなる“極性化合物”が生成され,これが原因で食品の風味や食感の低下,健康被害が起こることがわかった。現在日本では衛生規範で,油の劣化度は酸価,カルボニル価,そして発煙点における決められた値を指針としている。しかしながら,これは油の劣化により生成される“極性化合物”の全てを測定しているわけでないため,十分な評価方法とはいえない。そこで,油の加熱により壊れていない油の分子から劣化度を評価する“セッケン法”を考案した。結果として,食用油の劣化の指標の1つである酸価“AV”を簡易的に測ることのできるAV試験紙での測定より,劣化度を詳細に評価できることがわかった。油の劣化度を簡単に評価する方法として,“セッケン法”は有用であることが示唆された。

佐藤 大道,山口 悟†*
茨城県立日立第一高等学校 化学部 〒317-0063 茨城県日立市若葉町3-15-1
(2020年9月10日 受付;2020年9月30日 受理)